硫酸に銅板と亜鉛版をつかった電池をボルタ電池といいます。今回はボルタ電池の不思議に迫っていきたいと思います。
ボルタ電池の不思議に迫る
実験方法
まず、亜鉛版だけを硫酸に浸します。
亜鉛版が溶けて気体が発生しました。
Zn→Zn2+ + 2e-
H2SO4→2H+ +SO42-
2H++ 2e- → H2
続いて銅板です。亜鉛と違って溶けません。亜鉛は水素よりイオン化傾向が高く、銅は低いためです。銅板には気体が発生しませんでした。
次に銅板の上に亜鉛版を重ねます。すると・・・
いままで反応しなかった銅板から気体が発生しました。
ステンレス製のピンセットで繋げても同じです。何が起こったのでしょう?実は知らぬ間に電池を作ってしまっていたのです。
今回作ったボルタ電池について説明します。
実験解説
100mlのビーカーに硫酸を入れます。
電極には銅板と亜鉛版を使います。
電圧は実測値で1Vほどでした。
直流電圧0.4V〜3V、消費電流27mAのモーター(弱い電流で回るモーター)に繋ぎます。
・・・電池切れ感が半端ないです。今にも止まりそうです。
そこで使うのがこの魔法の液体です。
魔法の液体を銅板付近に垂らすと・・・
おー!モーターの速度が速くなりました!
少しするとモーターの回転速度はさらに高まりました。何が起こったのでしょうか?気になるのは銅板ですね。
何やらすごい勢いで気体が発生しています。
この気体の正体は酸素です。初め、モーターがうまく回らなかったのはボルタ電池の弱点である「分極」がおこったからです。ボルタ電池における分極とは、銅板に発生した水素によって、電池の反応が妨げられることを言います。この分極を防ぐには、邪魔な水素を取り除く必要があります。そこで使ったのが魔法の液体です。魔法の液体の正体は「過酸化水素水」(H2O2)別名オキシドールです。消毒液として使う血に垂らすとシュワシュワするやつです。過酸化水素は電極で酸化剤として作用します。水素を酸化させて水を作ってるんです。だから、分極が起きずに電池のパワーが増したんですね。
電極の様子
電池を使った後の電極。亜鉛が溶け出して色が変わっています。
硫酸に亜鉛が溶け出して色がつきました。
電極の厚み
真上から見ると亜鉛版が薄くなっているのがよくわかります。
やっぱり電池は面白いですね。中学校の授業で実験を行うときも、ただ、電気を流すだけでなく、探求的なより深い学びに繋げたいと感じました。
【ボルタ電池の動画】