今回はお手軽解剖の代名詞である煮干しの解剖です。今回は煮干し(カタクチイワシ)の解剖からヒトの構造を探っていきたいと思います。
煮干しの解剖からヒトの構造を考える
まずは大きめ(人差し指程度)の煮干しを選びます。
できるだけ、体が大きくて真っ直ぐな形のものを選ぶと解剖がしやすいです。上で言うと下の個体がいいです。
背骨の観察
まずは、脊椎動物の特徴である背骨を観察させます。人差し指と親指で頭骨の後ろをつまむと綺麗に背肉をとることができます。背骨を観察します。
次に腹側です。腹部の片側だけを開きます。内臓が現れます。内臓が腹側にあることを確認します。
このとき、エビの内臓はどこにあるか質問します。「背ワタ」という言葉を知っている生徒がいたなら、脊椎動物は内臓が腹側にあり、節足動物は内臓が背中側にあることを経験的に伝えることができます。知らない生徒が多く盛り上がります。
脊髄の観察
背骨をよくみると腹側に黒い紐のようなものが観察できます。身体中に血液を送り出す大動脈であることを伝えます。血管は黒っぽく見えるんですね。そのあと、脊椎動物のもっとも大事な脊椎の中にある脊髄を観察させます。脊髄は神経の束なので、細い糸のようなものが観察できます。背骨の背側に針(つまようじ)を刺しこむと上の写真のように綺麗に取ることができます。
卵巣・精巣の観察
魚が十分に成熟していれば、腹びれ近くに卵巣や精巣を観察することができます。上の写真では上が精巣、下が卵巣です。卵巣の方が大きくて観察しやすいです。
臓器の観察
腸の観察
次に内臓の観察です。まずは、内臓の末端である肛門から観察させます。小腸が折りたたまれてあることに着目させ表面積を広げていることに気づかせます。ここで大腸について発問すると理解が高まります。カタクチイワシには人間のような大腸がありません。陸上の生物と違って水分を再吸収する必要がないからです。ただ、浸透圧の関係で小腸から水分を吸収することはあるようです。この辺は高校で習う淡水魚と海水魚の尿の話にも繋がりますね。腸が黒い理由も考えさせたいです。背骨の大動脈の話から小腸に血管が集まっていることを見出し、そこから栄養分を血液で届けることを見出させたいです。
胃の観察
腸を取り除くと、オレンジ色をした胃が出てきます。ちゃんと袋の構造をしています。お湯で柔らかく戻して顕微鏡で観察すると、うまくいけばカタクチイワシが食べている微生物を観察することができます。
頭部の観察
頭部の観察です。頭部の片側のエラを取り除きます。まずは口の中を観察します。
さいはの観察
食べ物と水を分別する「さいは」が観察できます。口が開くとさいはもいっしょになって開きます。微生物の気持ちになって考えるととても怖いですね。クジラのヒゲと同じはたらきをしていることを伝えると良いかもしれません。
エラの観察
つづいてエラの観察です。タワシのような茶色いのがエラです。茶色いのは毛細血管が密集しているからです。酸素はどうやって送るのかを考えさせるとなぜ血管に覆われているのかが理解しやすいです。
心臓の観察
次に心臓を観察させます。心臓はエラのすぐ後ろにあります。酸素を血液にのせて全身に送るためです。生物の体は本当によくできています。心臓は太い血管ともいえるので色は真っ黒です。一房一室です。
和歌山のとれとれ市場で見つけたマグロの心臓との比較
大きさは違うけど確かに形は一緒です。
脳の観察
つづいて脳の観察です。脊髄につながる部分。脳は後頭部にあり、硬い骨で守られています。爪で強めに押し込むと骨が割れてオレンジ色の脳が現れます。中脳、小脳、延髄とひょうたんのような形になっているのがわかります。大脳はあまり発達していません。神経はオレンジ色なんですね。
感覚器官の観察
つづいて感覚器官です。まずは鼻の穴(鼻腔)を見ます。頭の先をルーペで観察すると小さな鼻腔が観察できます。
水晶体の観察
つづいて目です。白いボール状です。眼球を裏側から観察すると黒い幕のようなものがあります。これは、網膜の裏側で光が通り抜けているのを防ぐ役割をしているそうです。魚は目が頭の両側にあるので、強い光が右目からはいると左目の裏側から抜けてしまうんですね・・・大変だ。
視神経の観察
目の裏側をさらによく観察するとオレンジ色の紐のようなものが観察できます。これが何かを生徒に考えさせたいです。オレンジ色といえば脳の色です。「オレンジ色⇨脳⇨神経⇨・・・視神経!」と答えを導き出せたら最高ですね。そう、このオレンジ色の紐は視神経で脳につながっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?理科の先生の中ではポピュラーになってきたカタクチイワシ(煮干し)の解剖ですが、深く考えるとさまざまなことを学ばせることができます。解剖がただ、「楽しかった」で終わらないようにしたいと思います。
カタクチイワシの解剖について詳しく知りたい方は、小林眞理子さんの運営するホームページ「
煮干しの解剖資料室」に詳しい情報が載せられています。授業用資料をダウンロードすることもできるので、ぜひ活用していただきたいです。
↑授業用資料の貼り付け用台紙を元に解剖。他にも解剖の参考となるカラー写真シートなどをダウンロードすることができます。ラミネートして班に配布すると生徒自身で確認しながら解剖を行うことができます。
参考サイト
「
煮干しの解剖資料室」(https://www.niboshinokaibou.com/)」
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ー番外編ー
胃の内容物を見てみよう
煮干しの胃の内容物を見て、カタクチイワシの食性を見る実験です。
まず、煮干しを湯で戻します。美味しいにおいがします。
消化器を取り出します。上が腸、
腸の中にオレンジ色の胃があります。
シャーレに入れて・・・柄付き針で破ると
どっひゃー
っと声が出るほど、内容物が飛び出してきます。顕微鏡で見てみると
よくわからないぐちゃぐちゃのものや、ミジンコのようなものが見えます。食物連鎖を垣間みることができますよー。