子どもの貧困問題解決に向けて活動をしているNPO法人CPAOの徳丸ゆき子さんの話を聞きました。
CPAOについて
CPAOとは、Child Poverty Action Osakaの略で子育ちの社会化に特化し、大阪府の生野区を拠点に活動しています。同団体の創設者である徳丸さんは、子ども時代に不登校を経験されています。2010年に起きた「西区2児放置死事件」、2013年に起きた「北区母子変死事件」に心を痛め、「こんな悲劇を繰り返したくない!」と子供支援関係者を中心に団体を立ち上げました。自身の経験をもとに子どもの居場所づくりをテーマに活動を続けています。教育関係者はCPAOの活動から学ぶことがたくさんあると感じました。今回はCPAOの活動と子どもの貧困について書いていきたいと思います。
個居人づくり(こいびとづくり)
徳丸さんが特に重要視する活動が、子どもの居場所づくりです。徳丸さんはこれを「個居人づくり」と呼んでいます。
『しんどい状況に置かれている子どもたちを「ひとり一人の居場所となる人、寄り添う人」に繋げたい。』というのが徳丸さんの思いです。
個居人という言葉にすべてが詰まっています。居場所のない子どもたちは、「場所」を求めているのではありません。話を聞いてくれる「人」、信頼できる「人」を求めているのですね。
子どもの貧困と孤育て
子どもの貧困という言葉が使われるようになって久しいです。貧困と虐待の相関性はとても高いそうです。子どもの貧困といいますが、日本社会において子どもの貧困は親の貧困と同義です。中でも貧困率が特に高いのが母子家庭です。その背景には、孤立する母親像があると徳丸さんは主張します。そしてそれを「孤育て」と問題視されていました。
日本で貧困について考えるときは「相対的貧困」という考え方をします。相対的貧困とは、収入の中央値の2分の1以下の所得しかない世帯を指します。日本では年収122万円以下の世帯を指すそうです。月10万円・・・家賃や光熱費を払うと食費まで回せるお金は相当少ないです。この相対的貧困世帯が13.9%あると2017年6月27日に発表されました。3年前から2.4%改善しているとはいえ、9人に1人が相対的貧困にあるということになります。これは驚くべき数字です。しかし、貧困率は地域差が大きくこの数字は当てにならないそうです。貧困率ですが、2012年の山形大学の調査によると、沖縄が37.5%でワーストトップ、二位が大阪の21.8%、三位に鹿児島の20.6%と続きます。学力とほぼ同じ順位です。貧困率が最も低いのは福井県の5.5%です。・・・やはり学力が高い地域ですね。ちなみに、ひとり親の貧困率は50.8%と半数以上です。母子家庭が多く、仕事、家事、育児と余裕のない実態が浮かび上がります。
教育費について
貧困問題について考えるときに重要なのが教育費についてです。貧困は、親から子へと連鎖していきます。この悪循環から抜け出る方法が教育です。しかし、貧困家庭は教育についても苦境に立たされています。日本の教育費における公的支出の割合はOECD33か国中32位となっています。教育にお金がかけられていません。そのしわ寄せは家計を圧迫します。OECD平均が12%の家計における教育費の割合は日本では21%となっています。貧困対策基本法が制定されましたが、予算は少なく公的な教育費はなかなか増えません。選挙でも教育費について前面に押し出されていました。教育費は未来への投資です。教育を後回しにすることなく、少子化の今こそ教育にお金をつかってもらいたいです。
貧困と荒れ
子どもの荒れの問題の裏には、貧困の問題が隠れていることが多いです。
「衣食足りて礼節を知る」
という言葉が表す通り、貧困状態で朝ごはんも満足に食べられていないのに
「正しい言葉遣い」や宿題などの「学習」に身が入るわけがありません。いつも、イライラした精神状態で、暴力的になってしまいます。このような子どもたちに必要なことは何なのでしょうか?徳丸さんは、「社会や他人を信じる心」だといいます。
「社会って悪いもんじゃないなぁ」
「〇〇さんだけは信じられる」
こんな気持ちが社会との繋がりや自立への一歩になるのです。
徳丸さんは
「先生の仕事は学力の保証です。先生が生徒指導や家庭訪問など福祉的な仕事をするのは日本だけ。国の制度として福祉の仕事を先生にまかせるのではなく、SSWなどの専門の人を確保するべき」
と主張します。
子どもの貧困は、学校の先生だけでどうこうできる問題ではありません。第三者機関と連携して対応する必要があります。でも、教師としてできることもあります。先生が子どもたちにとって親や親戚以外で最も身近な大人であることは明らかです。「個居人」になったり、話を聴くことはできます。教師は子どもにとって悩みが相談できる信頼できる大人であってほしいと改めて感じました。
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