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ベートーヴェンの死因とワイン

歴史的な音楽家であるベートーヴェン。天才的な音楽家でしたが、20代という若さで難聴になってしまいます。ピアノを耳に当てたり、歯と鍵盤を繋ぐなど、骨伝導で作曲を続た話はとても有名です。彼は慢性的な腹痛や下痢など、健康面にいつも悩まされていたそうです。死後に行われた解剖では肝臓、腎臓、脾臓など多くの内臓に損傷が見られました。これらの病の原因には様々な説がありますが、その中の1つに鉛中毒だったからというものがあります。

ベートーヴェンの死因とワインの関係性


この説を裏付ける証拠として近年の調査でベートーヴェンの毛髪から通常の100倍近い鉛が検出され、
注目を集めました。鉛は聴覚や精神に悪影響を与えます。ではベートーヴェンはどのようにして鉛を体内に取り込んでしまったのでしょう?これにも諸説あるのですが、その1つがワインから鉛を摂取したというものがあります。

ワインと鉛

ワインと鉛、一見関係がなさそうですね。当時は今のような美味しいワインを作ることはとても難しく、ワインは酸味の強いものばかりでした。蜂蜜を入れて甘みをつけたりしていたそうですが、蜂蜜はとても高価でそう簡単には手に入りません。そこで注目されたのが、鉛の器に入れて弱火にかけるとワインが甘くなり長持ちするというものです。
実際に甘みが増し、さらには防腐効果まで増しました。いいことづくめです。しかし、ここに落とし穴があったのです。甘みを出して防腐効果を高めていたのは鉛と酢酸の化合物「酢酸鉛」だったのです。
出典:Wikipedia
一気に話が化学的になりましたね。この酢酸鉛は舐めるとほのかな甘みを感じます。別名「鉛糖」と呼ばれるほどです。ローマ人もワインを好んで飲んでいたそうですが(一日3リットルものワインを飲んでいたとか)やはり、酢酸鉛を含んでいたそうです。鉛中毒の人がたくさんいたんですね。
日本でも平安時代の貴族の女性は平均年齢がとても低かったそうですが、これも顔に塗るおしろいに含まれていた水銀の影響だと考えられています。
化学的な性質が分からなかったので仕方がないとはいえ、自ら毒を作り出して取り込んでいたとは・・・無知とは怖いですね。今、体に良いと口にしているものも100年後には毒物として周知されているかもしれません。そういえば、アルツハイマー病の患者の脳からはアルミが検出されるそうです。アルミ缶に入った飲み物の飲み過ぎが原因とする説もあります。うーん、瓶ビールに変えようかなと思う今日この頃です。
窪田 一志

1986年生まれ、近畿大学農学部卒業、学びエイド認定鉄人講師、理科コア・サイエンス・ティーチャー(CST)養成課程修了、MIE(Microsoft Innovative Educator 2022)取得、Apple Teacher 家庭教師、個別指導、塾講師を経て、神奈川県で5年間中学校理科教師として勤務。現在は大阪府の公立中学校で理科の楽しさを子どもたちに伝えるため日々奮闘中。 教材や教具、デジタル教材の開発、効果的なICT機器の活用方法、カードゲームや問題解決を通してのコミュニケーション能力の育成など自らの実践に基づいた教育活動を展開中。 ブログのアクセス数は月10万pvを超え、中学理科の授業情報をまとめた書籍「100均グッズからICTまで 中学校理科アイテム&アイデア100」を明治図書から出版。また、ブログがアプリ化されるなど勢いのある教育研究者 兼 教育実践者。 先生向け情報サイト「ふたばのブログ」の他、反転学習や、家庭学習に利用できるオンライン学習サイト「ふたば塾」、中学理科の授業動画を中心としたYoutubeチャンネル「ふたば塾」を運営。 記事執筆、研修・講演依頼、書籍化についてはお問い合わせフォームからお願いします。 【著書】 100均グッズからICTまで 中学校理科アイテム&アイデア100[明治図書出版] 授業力&学級経営力2023年12月号(記事執筆)[明治図書出版] 【協力実績】 株式会社 NHKエデュケーショナル 国立科学博物館 株式会社Gakken 日本テレビ「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」 株式会社 朝日新聞社 企画事業本部文化事業部 株式会社 高純度化学研究所 株式会社 アスウム 株式会社 学映システム 株式会社リバネス(教育応援VOL55) 株式会社ジヤトコ 富山県教育委員会「とやま科学オリンピック」 東京学芸大学 理科教育学分野 高知大学教育学部附属小学校 横須賀市立浦賀中学校 田尻町立中学校 順不同 Apple Teacher MIE(Microsoft Innovative Educator)