文部科学省が公表した全国学力テストの結果には、前回理科のテストが行われた平成24年度と変わらず、中学生の「理科離れ」の傾向が顕著に表れた。文科省は授業内容の改善などを進めているものの、数値の改善はみられなかった。一方で、上位県と下位県の格差が縮むなど学力の底上げが図られたのも事実で、専門家からは長期的な観点から教員の指導力向上を求める声が上がっている。
今回実施した質問紙調査では「理科の勉強が好き」と答えた小6は83・5%。小学校で理科は人気教科だが、中3になると61・9%まで減少する。小学校では観察や実験などの体験的学習が中心だが、中学になると理論的な授業が増え内容理解が難しくなるためだ。
中3で「授業内容がよく分かる」と答えた生徒は66・9%で3教科中で最も低い。小6からの低下幅も21・0ポイントと、国語(7・6ポイント)や算数・数学(9・3ポイント)に比べて急低下してしまう。この傾向は前回調査とほぼ同じで、改善はみられなかった。
文科省も危機感を強めて対策を行っている。24年度には、改定された現行の学習指導要領が中学校で全面実施され、年290時間だった授業を年385時間に拡充。理科への関心を高めるため、3割増えた時間を体験的学習に充てている。
25年度からは、教員の負担を減らし体験型学習を充実させるため、実験準備などを行う観察実験補助員の配置を推進。自治体での教員研修も促している。
今回の学力テストでは、平均正答率で下位3県の平均と全国平均の差が小学校で0・4ポイント、中学校で0・2ポイントそれぞれ縮まり、学力の底上げが確認された。
理科の授業で週1回以上の観察や実験を行った中学校は、24年度の前回調査時点よりも3・7ポイント増え59・2%に増えている。一方、観察実験補助員が配置されたのは、小学校で13・1%、中学校ではわずか4・7%。予算不足や人材難など自治体の懐事情から配置が進まない現状もある。
左巻健男法政大教授(理科教育)は「カリキュラム面では理科好きの生徒が学びやすい環境が整いつつあり、国の対策の効果は長い目で見ることが必要だ。人材面では、ベテランから若手に指導法を伝授する機会が減ってきており、教員の指導力が失われているのが現状。教員の指導力育成を抜本的に解決する工夫が必要だ」と指摘している。
(産経ニュースより)