教師五者という言葉があります。五者とは学者、医者、易者、役者、芸者です。教師はこれらの5つの役割をこなさなければならないという教えです。私はこの五者に一者付け加えて「教師六者論」にしたいと考えています。では、付け加えたい一者とは何か・・・それは「心理学者」です。
教師五者に付け加えたいのは心理学者
⚫︎イジメが起こるのは集団心理がはたらくからです。
⚫︎自殺がおこるのは心理状態が不安定だからです。
教師は子どもの命を守るためにも
「人の心理状態」について知っておくべきだと思います。また、生徒の心理状態を把握できれば学級経営や学年経営をより円滑に進めることができます。
今回は、人の心理を調べるために行われた心理学実験を紹介します。少し怖い実験もありますが、人の本質をついた実験です。クラスにおきかえて考えてみてください。
1、スタンフォード監獄実験
1971年にスタンフォード大学で行われました。「監獄実験」は、精神的に健全な学生を囚人と看守のグループに分け、24時間その役割を演じさせるというものです。当初、2週間続く予定だった実験は、囚人たちに対する看守グループの暴力が、制御不能なほどエスカレートしたことで6日間で打ちきりになりました。
この実験は、社会的な環境が人の心理に大きな影響を与えることを示しています。
学級委員や班長になればクラスをまとめようとしますし、一度問題児とレッテルを貼られた生徒は問題行動を繰り返すようになるのです。
この実験は映画化もされています。興味のある人は、ぜひ観てみてください。
2、割れ窓理論とケリング博士の実験
1980~90年代、ニューヨークは治安が悪くアメリカで一番の犯罪都市でした。なんと年間60万件の犯罪が起きていたのです
。
しかし、ある取り組みを行ったところ、犯罪件数が5年後に半減したのです。その取り組みとは
落書きを消す
この取り組みに対しては
「凶悪な犯罪の取り締まりを先に強化すべきだ」
という批判が多かったのですが、落書きを消していくと不思議と凶悪犯罪の数も減っていったのです。そして、落書き消しの次の取り組みが
軽犯罪の取り締まり
です。凶悪犯罪ではなく、軽犯罪を徹底的に取り締まったのですが、5年後にはなんと凶悪犯罪が半減したのです。
この、落書き消しや軽犯罪の取り締まりを指導したのが、ジョージ・ケリング教授です。
ケリング教授は興味深い実験を行いました。その実験とは、街に車を放置するとどうなるかというものです。結果は、
きれいな車を放置する
⇒1週間しても特に何も起きない。
フロントガラスを割った車を放置する
⇒すぐに部品が盗まれる。その後、窓ガラスが割られ、落書きされ、最後には車が破壊される。
何もなかった1週間と、壊され始めた1週間。その違いは、窓ガラスを1つ割っただけ
です。これが、割れ窓理論(ブロークン・ウィンドウズ理論)
です。
ニューヨークの例でいうと、凶悪犯罪の対応に追われ小さな犯罪をそのままにしてしまうと次の大きな犯罪に繋がってしまうというわけです。逆に、
小さな犯罪をなくすことができれば、次の凶悪犯罪の芽を積むことになり、結果として凶悪犯罪を減らすことができるのです。
人は誰でも良い心と悪い(ずるい)心を持っています。この二つが戦って勝った方が行動に現れます。
割れ窓理論は、落書きや壊されたものが悪い心を助長させ、間違った行動を起こさせてしまうというものです。
想像してみてください。
花が咲いてゴミ一つない公園。
ここにゴミを捨てようとは思いませんね。
逆にゴミがいたるところにある公園。
ゴミを持っていれば•••他の人も捨ててるし自分が捨てても別にいいかという気持ちになってしまいそうです。
この割れ窓理論は、教師が必ず知っておくべき理論だと思います。なぜ、放課後に机をきれいに並べるのか。なぜ、ポスターのイタズラに迅速に対応しなければいけないのか。ロッカーを整理させるのはなぜか。
全て割れ窓理論で説明できます。
特に若い先生は、問題行動の多い生徒に意識が向いがちです。しかし、一番大切なのは一般の生徒です。一般の生徒の小さい間違いを正していけば、大きな問題を減らすことに繋がるということを知ってもらいたいです。