道徳の授業で使いたい詩の紹介です。吉野弘さんの「夕焼け」です。
いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をキュッと噛んで
身体をこわばらせて――。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。
考えさせられます。特に解説は書きません。先生と生徒でこの詩に込められた想いに心を巡らせていただければと思います。
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ご無沙汰しています、バタバタしていて、自分のことで精一杯です。ブログはまめに見ています。吉野さんの詩は、私も大好きです。この詩のほかに、「雪の日に」が大好きで、雪が降った日は、いつも学級通信に載せてしまいます。
コメントありがとうございます。僕も、テスト、評価、研究授業、学期末準備とバタバタしています。ブログに書きたいことはたくさんあるのですが、日々の仕事に追われてついついサボってしまっている状態です(笑)雪の日、知らなかったので調べて読ませていただきました。考えさせられますね。もう少しで夏休み。もう一踏ん張り。遊有さんもお疲れのでないようにしてください。