前回、風船の話の中で飛行船の原理について書きました。今回は、同じく化学の単元でつかえる飛行船の授業ネタを書きたいと思います。
19世紀から20世紀初頭にかけて、飛行船は豪華な空の客船として夢の乗り物でした。 飛行船を本格的な空の乗り物として実用化させたのは、ドイツ人退役軍人のツェッペリン伯爵です。 1908年にツェッペリン社を設立。ツェッペリン社の最終完成号機となったLZ129「ヒンデンブルク号」は、 全長245メートル、直径41.2メートル、充填浮遊ガス約20万立方メートルで6日間の連続航行が可 能な最先端技術を結集した飛行船でした。この船が、1937年の初夏、ドイツ、フランクフルトから大西洋 を横断した後、アメリカ、ニュージャージー州レイクハーストで着陸態勢に入り、繋留綱を地上に降ろした瞬間、悲劇が起こりました。なんと飛行船が突然爆発し、待ち受けていた大勢の人々の眼前に墜落したのです。乗客、乗務員合わせて34人が死亡、 多くの乗客が重症を負いました。
生徒への発問
生徒に話すときは、ここで一旦話を切ります。そして
「なぜヒンデンブルク号は突然爆発したのでしょうか?」
と発問します。
原因は、飛行船に充填された水素ガスへの引火でした。ヒンデンブルク号の外皮に塗ったゴムの摩擦による静電気が火花を発し、水素に引火したものと判明したのです。
水素が、火をつけると爆発することが学べるました。ここで、次の発問
追発問
「では、なぜ危険な水素を使ったのでしょうか?」
これには生徒も中々答えられません。
実は、ヒンデンブルク号の設計者も、水素でなくヘリウムガスの使用を提案していました。しかし、実質的に世界唯一のヘリウム産出国であったアメリカは、ナチスがヒンデンブルク号を軍用に転換することを恐れ、ヘリウムの供給を認めなかったのです。もしも、ドイツとアメリカの仲がよく、
水素の代わりにヘリウムを使用していたら、ヒンデンブルク号のこの悲劇的大惨事は起きなかったと言えます。
理科と社会の横断的な授業ですね。このように、一つの事象でも様々な視点から考えることで
「水素は一番軽いが爆発すること」
「ヘリウムは軽くて安全なこと」
「ドイツはアメリカと仲が悪かったこと」
などたくさんのことを学ぶことができます。生徒にも物事を様々な視点から見つめる目を養ってもらいたいと思います。
ヒンデンブルク号の実際の映像
ヒンデンブルク号の事件は映画にもなっています。気になる方はぜひ見てみてください。