マシュマロテストという面白い心理学実験があります。教師にとってとても興味深い実験なので紹介したいと思います。
マシュマロテスト①
マシュマロテストは、今から40年以上前、1968年アメリカのスタンフォード大学で、心理学者ウォルター・ミシェルによって行われました。
対象は、当時4歳の子供達186人。 子供たちは1人ずつ教室に通され、椅子に着席します。机の上には1つのマシュマロが置いてありました。実験者は子どもにこう伝えます。
「私はちょっと用事があるので、部屋を出るね。このマシュマロは君にあげるけれど、私が戻ってくるまで食べるのを我慢していたら、マシュマロをもう1つあげるよ。我慢できなくなったら、ベルを鳴らせば、食べてもいいよ。でも、私が戻ってくる前に食べたら、2つめはないからね。じゃあ15分したら戻ってくるね」
子どもたちはマシュマロを目の前にして「待て」を求められるのです。かんたんに言うと、子どもの自制心を調べる実験ですね。さて、子どもたちはどのように行動したのでしょうか?
自制心を働かせるために、子どもたちはさまざまな精神的戦略を編み出しました。手で目を覆う子どももいました。部屋の隅に立って、マシュマロを見ないようにした子どももいたそうです。机を蹴りだしたり、お下げの髪をいじったり、マシュマロがぬいぐるみであるかのように見立てて遊ぶ子どももいました。こうした戦略を用いることにより、参加した4歳児のうち約25%が、15分後まで「満足を遅延させること」に成功したのです。
マシュマテストの意義
「この実験の何が面白いの?」
そんな声が聞こえてきそうですね。実はこの実験には続きがあるのです。ミシェル氏は4歳の子どもの決断が子どもの将来にも影響を与えるのではないかと考えたのです。
この実験から12年後、ミシェル氏は、マシュマロ実験に参加した被験者約600名の保護者や教師、学習指導者に対して、被験者たちの日常生活について尋ねるアンケートを送付しました。 その結果、1分以内にベルを鳴らした子どもたちは、学校でも家庭でも行動上の問題を抱えている率が高いことが分かったのです。教室での問題行動も多く、かんしゃくを抑えるのも難しかったそうです。そして、15分待てた子どもは、30秒しか待てなかった子どもよりもSAT(大学進学適性試験)のスコアが平均して210点も高かったのです。 ミシェル氏の研究は、セルフ・コントロールや我慢強さといった非認知的な性格が、実生活では非常に重要だということに焦点をあてるものでした。多くの研究においても、人生の成功にはIQ(知能指数)よりもEQ(感情指数)のほうが重要らしいということが明らかになっています。社会的に成功している社長などの IQを調べても相関関係はなく、代わりにEQには相関関係があることがわかっています。
※EQについてはこちらをご覧下さい。
ミシェル氏の研究はさらに、意志力の再定義にもつながったのです。われわれはふつう、意志力とは、歯を食いしばって誘惑に耐えることだと思いがちだが、ミシェル氏は研究を通して、これは逆だということを明らかにしたのです。「満足を遅延させる」ことは、「関心を戦略的に配置する」(マシュマロから気をそらす方法を科学的に説明した表現)ことができるかどうかにかかっていることがこの実験によって分かったのです。子どもたちの欲求は、克服されたのではなく、そらされ、忘れ去られたということですね。満足を遅延できた子どもは、「自分の意志力が限られたものであることを理解していた。マシュマロのことを考えてどんなにおいしいかと思ったりしたら、それを食べてしまうだろう。まずはそれを考えないようにすることが鍵なのだ」とミシェル氏は考えたのです。
・・・興味深いですね。
- 4歳のときの「食べる」「食べない」の決断が、その子の将来にも引き継がれていくということ
- 自制心・意志力とは歯を食いしばって耐えることではなく、考えないようにしたり、忘れたりする能力だということ
教師は、このような事実を認め、どのように子どもに接することが子どもの学びにつながるのかを考え続けていかなければならないと感じました。
マシュマロテストの本
マシュマロテストについては本も発売されています。教師として興味深い内容です。ぜひ読んでみてください。
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マシュマロテストの動画
4才のマシュマロテスト
the marshmallow test