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教師に読んでもらいたい本「2020年からの教師問題」

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ベスト新書、石川一浪先生の2020年からの教師問題を読みました。

この本は、大阪にある香里ヌヴェール学園の学院長である石川一浪氏が21世紀に求められる教育・教師のあり方について書いた本です。色々考えさせられます。先生方にぜひ読んでもらいたい本です。

2020年からの教師問題

2020年に大学入試センター試験が廃止になることが決まりました。センター試験の代わりに大学入学希望者学力評価テスト(仮称)が行われます。大学入試が変わるということは、高校の授業内容が変わるということです。そして高校の授業内容が変わるということは、高校入試が変わるということです。中学校も高等学校も授業内容が大きく変わることになるんです。これは戦後最大規模の改定と言われています。

現場でも、

「AIによって今ある仕事の半分がなくなってしまう」

「変化へ対応できる力をつけなければならない」

「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」

「知識の習得から知識の活用へ」

「プログラミング教育、英語教育の必修化」

など学習内容の大幅な改定に向けて動き始めているはずです。

あなたの学校の先生はこの問題、教えられますか?

【問】「もし、あなたがザビエルだったとしたら、布教のために何をしますか。具体的な根拠とともに400字以内で説明しなさい」

本の帯に載せられている問。あなたならどのように答えますか?もちろん人によって様々な解答があります。この問のように、ある課題に対してクリエイティブに思考力をはたらかせることがこれから求められていくようです。

2020年の大学入試問題に教師は対応できるのか

【問】「知識は人間だけによって創られていくのであろうか」(2015年慶應義塾大学経済学部 小論文)

【問】「永遠に生きられれば人は幸せだろうか」(2014年早稲田大学政治経済学部 英語)

これらは実際に大学で出題された問題です。このような問いに自分なりの意見をもちそれを論理的に文章化させる力が求められています。

このような力はどの教科でも同様に求められます。理科に関わる問題では以下のような問題が出題されました。

「もし、地球が東から西に自転していたとしたら、世界は現状とどのように異なっていたと考えられるか、いくつかの観点から考察せよ」(東京大学理科一類 外国学校卒業学生特別選考)

このような問題の特徴。それは

学校で教えてもらっていない

ということです。

学校で教えてもらっていない内容が受験に出る!?

私も理科の授業の中で「もし地球が東から西に時点していたとしたら・・・」などと教えたことは一度もありません。つまり、この問いに答えるためには、学校で先生が話したことをただ覚えているだけではダメだということです。

石川先生は、2020年に向けて生徒に身につけさせる能力を3つ挙げていますが(※石川先生の考えについて詳しくは本をご覧ください。)ふたばがこの問題を答えるために必要なことを上げるなら

  • 教科にとらわれない幅広い知識
  • シミュレーション能力
  • 情報を考察する能力

の3つです。

教科にとらわれない幅広い知識

まず、「自転」「世界の現状の変化」について考えるためには、現実世界で自転が世界にどのような影響を与えているのかを知っておく必要があります。理科の内容でいうと季節風は赤道と極の温度差と自転によって起こるという知識が必要です。他にも太陽の動き、星の動き、海流、台風の渦など様々なことが自転の向きが変わることで変化することを知識として知っておく必要があるのです。「もし○○なら」といった仮定の話に対応するためには、現在どうなっているかについて教科にとらわれない幅広い知識が必要になるはずです。

シミュレーション能力

次、シミュレーション能力です。季節風の向きが変われば、飛行機の航路が変わります。日本がアメリカに向けて放った気球爆弾は使えませんでした。星の動きが逆になれば、サソリ座はオリオン座を追いかけません。オリオン座がサソリ座を追いかけるように神話は変わっていたでしょう。

もし○○ならば・・・

という問題に答えるためにはシミュレーション能力が必要不可欠です。ふたばは、これから社会で活躍するために一番必要な能力が「シミュレーション能力」であると考えています。予測できない社会だからこそ、

「これから何が起こる可能性があるのか。」

「もし、変化が起こるならどのように対応すればよいのか。」

対応力が必要になるのです。

先が読めないこれからの時代にどのような能力が必要になるのか?適者生存という言葉がすべてを表しているように感じます。

世の中は力の強いものが生き残るわけではありません。恐竜はとても強い存在です。しかし、気温の変化に対応できず絶滅しました。哺乳類はうまく気温の変化に対応することができました。しかし、哺乳類は気温の変化に偶然対応できただけです。しかし、私達人間は気温が下がることを事前に予測しシミュレーションすることで、「温かい服を用意する」という対応策を準備することができるのです。変化が多い社会にに対応するためには、「シミュレーション能力」が何よりも大切になるのです。

自分の解答を再検討する力(クリティカルシンキング)

幅広い知識を活用して、シミュレーションを行う。最後に必要となるのは、シミュレーションして出した結果に矛盾はないか再検討する力です。自分が出した解答に対して、否定的に考える(クリティカルシンキング)ことはとても難しいことです。しかし、自分が出した解答が本当に正しいのか疑ってかかることはとても大切です。情報を再検討し否定的に考察する能力がシミュレーションをより正確なものにしてくれるのです。

その他の入試問題

この本には他にも

「江戸時代の三大改革と田沼意次の政治を比較し、あなたであればどのような経済政策を取りますか」

 

「親友と最近連絡が取れません。どうやら、親友はひどく落ち込んでいるようです。何度か連絡を試みた結果、ようやく明日親友と会って話すことになりました。そこでは、どのようなやり取りが二人の間で繰り広げられるでしょう。二人のやり取りを対話形式で解答用紙のA欄に、そしてそのやり取りの中であなたが意図したことをB欄に述べなさい。」(2008年 慶應義塾大学医学部 小論文)

など様々な例題とともに

大学が何を意図してこのような問題をだしているのか。

21世紀に必要とされる能力とはどのようなものなのか。

について様々な視点から書かれています。特に石川先生の知識・理解思考、論理的思考、創造的思考の3つの思考レベルと単純関係、カテゴライズ、全体関係の3つの問題難度に分ける「思考コード」の一覧表は目からウロコが落ちました。現役教師にはぜひ読んでもらいたい本です。まだ読んでいない先生は春休みを利用して読んで見てください。新年度の教育方針がガラリと変わるかもしれませんよ。

以前に書かれた2020年の大学入試問題もおすすめです。合わせて読んでみてください。

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自己紹介(PROFILE)

窪田 一志

窪田 一志

1986年生まれ、近畿大学農学部卒業、学びエイド認定鉄人講師、理科コア・サイエンス・ティーチャー(CST)養成課程修了、MIE(Microsoft Innovative Educator 2022)取得、Apple Teacher
家庭教師、個別指導、塾講師を経て、神奈川県で5年間中学校理科教師として勤務。現在は大阪府の公立中学校で理科の楽しさを子どもたちに伝えるため日々奮闘中。
教材や教具、デジタル教材の開発、効果的なICT機器の活用方法、カードゲームや問題解決を通してのコミュニケーション能力の育成など自らの実践に基づいた教育活動を展開中。
ブログのアクセス数は月10万pvを超え、中学理科の授業情報をまとめた書籍「100均グッズからICTまで 中学校理科アイテム&アイデア100」を明治図書から出版。また、ブログがアプリ化されるなど勢いのある教育研究者 兼 教育実践者。
先生向け情報サイト「ふたばのブログ」の他、反転学習や、家庭学習に利用できるオンライン学習サイト「ふたば塾」、中学理科の授業動画を中心としたYoutubeチャンネル「ふたば塾」を運営。
記事執筆、研修・講演依頼、書籍化についてはお問い合わせフォームからお願いします。

【著書】


100均グッズからICTまで 中学校理科アイテム&アイデア100[明治図書出版]





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